【頂上決戦 1】

 この家のペットとしての生活にも、ようやく慣れてきた。

 自分がペルシャという種類だったことはペットショップの店員が話していたのを盗み聞いて知っていたが、この家にきて初めて鏡を見て絶句したことを思い出す。

 これほどまでに白い体躯だったとは。

 膨張して見えるせいか、本来よりも太って見える。どこか損をしているような気分になった。

 そんなぼくは、「しあ」と名付けられた。

 ぼくより一ヶ月ほど遅れてメスの猫が家にやってきた。

 外見は多めに見積もれば美人と形容しても良さそうだったが、対人能力に大きな問題があった。

 飼い主から、「ラキ」と彼女自身の名前を呼ばれても、なかなか近づこうとしない。それどころか、少しも媚びずに狭い隙間に身体を埋めてしまうことも日常茶飯事だった。

 飼い主は男と女が1人ずつ。

 女の方は、とにかく彫りが深くて目が大きかった。だから、アイちゃんと名付けた。

 男の方は、平均よりも少し髪が長かったので、ロン君と呼ぶことにした。

 それを新入りだったころのラキちゃんに教えると、鼻で笑われた。きっとぼくのありあまるセンスの良さを認めるのが癪で、照れ隠しのつもりだったに違いない。

 ちなみに、ラキ、と呼び捨て、とても嫌な顔をされた経験から、ぼくは彼女のことを「ちゃん」付けで呼んでいる。しかし、ラキちゃんはぼくのことを「しあ」と呼び捨てにする。

 しかし、そんなことは気にしない。ぼくは大人な猫だから。

 そんな大人なぼくにも、いまだに解決できない謎があるのだ。

〜次回へ〜

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